ふりむいて、好きって言って。(仮/旧:三神くんは恋をする)
制服の白いシャツが眩しく思えるのは、多分その色のせいだけじゃない。


顔を向けなくても、視界の端でいつも君の白を追っている。


「明日から夏休みだけど、羽目外すなとか勉強しろとかSNSの使い方とか、終業式のもっともらしい話は全部建前だから。やりたいなら自分で責任もってばれないようにやれ。そんなことで俺に自分のケツ拭けねぇ奴らの指導させるな」


生徒が夏服に移行したのと同時に、これ幸いとネクタイを付けて来なくなった志谷先生は、集会で閉めていたシャツの第一ボタンを鬱陶しそうに外しながらそう言った。


窓の外では、夏を焦がすように蝉が鳴き、一瞬で肌を焼いてしまいそうな日差しが降り注いでいる。


体育館の蒸し暑さに比べれば、からっとして幾分かマシなのだろうけど、下校のことを思うと気分は晴れない。


今日は授業が昼前に終わるから、余計に。


「ただ、問題起こしたらお前らの数学の成績はないと思えよ」


課題のプリントを配る先生は、相変わらず冗談か本気か分からない。


けれどまぁ、なんだかんだみんな志谷先生の言うことを聞いてしまうのだ。


不良だと称される三神くんでさえ、結局は。


私はそっと三神くんを窺う。


もう見慣れてしまった、明るい髪。


夏なのに焼けていない腕が、白いシャツから伸び、だらりと机の上に投げ出されていた。


課題のプリントは興味なさげに、突っ伏した体の横に放置されている。
< 100 / 163 >

この作品をシェア

pagetop