ふりむいて、好きって言って。(仮/旧:三神くんは恋をする)
「基礎的なものしか配ってないから。必要なやつは応用も渡すから逐次取りにきて」


言いつつ、先生は一部を私の机に置く。


見上げれば、「羽瀬はどうせ要るだろ」と当たり前のように言われて苦笑する。


どうせ予定のない夏だ。


暇を持て余すなら、勉強している方がいい。


私はありがとうございます、と頭を下げると、基礎のプリントと重ねて、それを鞄にしまう。


篠宮くんは「今年の夏は楽勝じゃん。綾芽ちゃんやっさしー」と志谷先生に胡麻をすりすり。


今のところ、夏休み終盤に課題地獄に見舞われる未来は見えていないらしい。


呆れた顔の和香ちゃんには見えているみたいで、表情の落差があまりにも激しい。


対して志谷先生は、


「優しいわけねぇだろ」


と、意外にも篠宮くんを一刀両断した。


否定するその顔は、いつになく苦虫を噛み潰したような表情だ。
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