ふりむいて、好きって言って。(仮/旧:三神くんは恋をする)
「遠足、別に行きたくないわけじゃなくて、昔からそういう行事は休んでたし、クラスのやつらも俺に来て欲しくなさそうだったし。俺も特別行きたいわけでもなかったから、じゃあ行かなくてもいいかって」


私の涙が引っ込んで、すんすん鼻をすする音が止まった頃、三神くんはぽつりと言った。


三神くんは多分、聞いていたんだ。


自分がクラスでよく思われていないこと。


怖がられていること。


でも、


「……そんなことない。全然そんなことないですよ、三神くん」


だって、私はこんなにも三神くんと話したいと思ってる。


三神くんのことを知りたいと思ってるのに。


世界を閉じてしまわないで欲しい。


ひとりでいることに、慣れようとなんかしないで。


「私は三神くんと一緒に遠足に行きたい、です」


三神くんは驚いた顔をして私を見ていた。


けれど直ぐに柔らかく目を細める。


「いいんちょー素直すぎ。あんた将来壷買わされそう」


「買いませんよ!」


反論するけれど、軽く笑い飛ばされてしまう。


三神くんはひと通り満足するまでくつくつ笑うと、自分を落ち着かせるようにふぅ、と息を吐いた。

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