100年後も、君の代わりになんてなれない
あの子の夢
幼馴染の優ちゃんは、一言で表すと可愛い子だった。
明るくて、思ったことをはっきりと言って。こんなに弱くて引っ込み思案な私と、ずっと一緒にいてくれるほど優しくて。幼稚園の頃から変わらない、耳より少し高いところで結ばれた、二つの長い髪が特徴の子だった。
小学校三年生の夏休みだろうか。山積みになった宿題の一つに、読書感想文があった。
先生に、できれば小説を読んでくださいと言われたから、一緒に図書館に行って本を借りてきたね。そのまま二人で私の家に向かい、先程借りた児童書を開けた。私は漢字が苦手だったから、読書が本当に憂鬱で仕方なかった。
漫画ならいくらでも感想を書くことができるのに。そんなことを思いながら、並べられた文字を目で追っていたんだ。早く最後のページにたどり着くことだけを考えていて、物語の世界に入ることができていなかったんだと思う。
そろそろ別れなければならない時刻になったとき、優ちゃんがいきなり本を机の上に叩きつけた。今でもその時の事、よく覚えてる。驚いて手元の文字列から視線を外し、机の上で静かに待機する本と優ちゃんを見た。
「ど、どうしたの?」
私が聞いても、優ちゃんは首を振るだけで何も言わない。だから私は心配になって、顔を覗き込んだんだ。髪の毛で隠れた表情は暗くてよく見えなかったけど、キラキラと光る何かが、床に落ちて行くのが見えた。
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