100年後も、君の代わりになんてなれない
現実を受け入れられない日々が続く。
ぽっかりと穴の開いた、中身のない毎日が、風のごとく過ぎていった。
どうして私が助かって、優ちゃんが死んでしまったのだろう。
夢も希望もない私が生き残るよりも、いつか小説家になりたいと願っていた優ちゃんが生きていた方が、価値があったはずなのに。
「神様……残酷すぎるよ」
夢に向かって必死に頑張っていた優ちゃんが目に浮かぶ。
ノートにプロットを書いて試行錯誤したり、サイトに公開した話に批判が飛んできて落ち込んだり、賞の結果をまだかまだかと待ちわびて、かすりもしなくて肩を落とすけど、すぐに自分の悪い点を見直して次はもっと良い作品を作ると奮闘する姿。
知っているから、つらかった。叶えることができなかった優ちゃんの夢。
二度と叶えることはできないんだ。
だってもう、優ちゃんはここにはいない。永遠に戻っては来ない。
気が付くと、私は優ちゃんの書いた小説のサイトを開いていた。
一番最近の、もう少しで文庫本一冊分の十万文字に達しそうな物語。
続きはない。
この物語は永遠に完結しない。
優ちゃんの中で、この物語はどんな風に終わりを迎えるつもりだったのだろう。
あらすじを知っていても、一言一句どうおさめるかなんて知らない。私に続きを書くことはできないんだ。
そんな現実がつらくて、でも、完結できず夢も叶えられなかった優ちゃんの気持ちを考えると、涙が止まらなかった。
どうせ夢がないのなら、私が優ちゃんの代わりに夢を叶えてあげよう。
作家になろう、とこのとき私は誓ったはずだった。