100年後も、君の代わりになんてなれない

「あたし、希衣がどんな夢を目指してるのか知りたい! あの子、いつも受け身というか、おとなしいし特に何も関心無さげだったから、すごく気になる!」


「ああ、それはですね……」


「ストーップ! あたしが言いたいこと、わかんない? 地上に行かせてって言ってんの!」


 無理なお願いだとわかっていたが、定期的にほかの死者たちも地上の様子を見に行っている。


だったらあたしだって、見に行きたいじゃない?


すると天使は大きなため息をひとつついた。おいおい、こんなのが天使で大丈夫なの神様。


「わかりました。ですが長居はできませんよ。
あと、一度天国で過ごす権利を与えられていますが、天国にそぐわない感情を抱いたり、行動を起こした場合、地上ですので浄化することができません。
それにより、天国へ帰ってくることができず、悪魔となってしまうこと、ご注意ください。
帰るときは、空に向かって声でもかけてください」


「あーはいはい。わかった!」


 早く地上に行きたかった。家族にも、希衣にも会いたかった。

長居できなくても、相手があたしの存在に気付かなくても。


「では、行ってらっしゃいませ」


 天使の言葉と同時に、あたしが立っていた場所に大きな穴が開く。

あたしは無条件にその空間に吸い込まれた。

真っ暗で、何も見えない。
ただ全身に重力が加わって、どこまでも落ちた。

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