100年後も、君の代わりになんてなれない
もう希衣は立派な大人だ。
なのに彼女は自分の人生を犠牲にして、「優ちゃんの代わりに」と執筆活動を続けている。
もうあきらめてしまえばいい。
あたしの代わりに夢を叶えようとしないでほしい。
そうやって作家になられても悔しいだけだし、なにより希衣には自分の夢を持って、それを叶えてほしい。
だからあたしは、希衣が応募したコンテストを、ことごとく落とした。
ある時からあたしは、悪魔の力が働くことに気が付いた。
希衣の応募したコンテストがどうなっているのか気になって、何度か出版社を覗きに行ったことがある。
そこで、希衣の作品が読まれているのを見た。
「この作品、まあまあいいかもな」
そんな言葉を聞いたとき、何かがあたしの中で沸(わ)き上がった。
胃から喉元に、黒いものがたくさん溜まって、目頭がじわりと熱くなる。
多分悔しかったんだ。
あたしはそんなこと、言われたこともない。
言われていたとしても、知らない。
かすりもしなかったあたしの夢と努力は、本当になりたいと思っているわけでもない人に負けてしまうなんて。そんなの許せなかった。