100年後も、君の代わりになんてなれない
その時、また頭痛が襲った。あたしの汚い心が膿(うみ)となって出ていくように。
そして、先ほどまでこの作品は良いと言っていた編集者が、原稿を机にはらりと捨てた。
「でも、やっぱりだめだな」
同じことを、他のコンテストでもして、これはあたしの悪魔の力なのかもしれないと思った。
希衣を落とすとき、あたしの頭の角は必ず伸びる。まるで、本物の悪魔に近づいてきていると言わんばかりに。
確かにあたしはひどいことをしている。あたしの代わりに、と必死に努力する優しい希衣を、あたしが落としているのだから。
でも、これって本当に悪いことなの?
だって、それは希衣の夢じゃない。
希衣は希衣の夢を追いかけるべきなのに。
人生は短い。いつ死んでしまうかもわからない。
だから希衣には自分の好きなことをしてほしい。なのに。
「どうして好きでもないことを、人生を犠牲にしてまで、何年も続けられるの?」
あたしの問いに、返事はない。
ただ眠そうな目を擦って、パソコンと向き合う希衣に、またモヤモヤとした何かが溜まっていく気がした。