100年後も、君の代わりになんてなれない

「ねえ、ほんと、やばい。ねえ、なんで今まで本読まなかったんだろ! すっごい! 凄すぎる! 命に関する話だったんだけどね、もうあたし、感動して泣いちゃった!」


 えへへと笑って話す優ちゃんに、ホッと胸をなでおろした。

優ちゃんはまだ興奮が修まらないようで、床や机をバシバシと叩く。時折、天井を見上げてフッと笑ったり、視線を落として何か考えているようだった。


「どうしてあんなに感動する話が書けるんだろ! 希衣(きい)もそう思わない?」


「う、うん」


 もうすぐ読み終わるというところまできたにもかかわらず、私はあまり共感や感情移入をできずにいた。


 そのせいか、それがどんな話だったか未だに思い出すことができない。

単にその話が、私の趣味に合わなかっただけかもしれない。

配られた原稿用紙の枚数を超えてまで、感想を書いていた優ちゃんとは対照に、何の感情も生まれなかった私の感想文は、中身のない文章で埋まったと思う。


でも、私にとっては無意味だったこの宿題が、優ちゃんの一生追いかける夢を生んだことは確かだった。

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