100年後も、君の代わりになんてなれない

 泣きたくなんかないのに。きっとこれが本当に最期になるのに。

嫌だ、涙で視界を曇らせたくない、笑顔でお別れしたい、なのに。

必死で笑顔を作っても、何度涙を振り払っても、心の奥からあふれてきて、止まらなかった。


「そんなに泣かないでよー。あたしまで……涙が出てくるじゃない……。大丈夫、あたしはずっと、見守ってるから。書籍化したら、あたしの仏壇にでも飾ってね」


 その言葉を最後に、優ちゃんは光と風に包まれて、空気に溶けていった。


 部屋には再び静けさが戻る。ただ今までとは違う、どこか暖かな空気で満ちていた。


「優ちゃん、ありがとう。私、頑張るからね」


 再び私は椅子に腰かける。真っ黒になった画面に色を入れ、キーボードを叩いた。


 文字上に溢れる私の物語(せかい)。いつかそれが、世に出ることを願って───。










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