100年後も、君の代わりになんてなれない

 今でもその言葉が、情景が、頭の中から離れてくれない。


 あっさりといなくなってしまった。

人が簡単に死んでしまうなんてこと、あたしが一番分かっていたはずなのに。

希衣だけがいなくなって、あたしが生きている世界がたまらなく苦しかった。

一緒に病院に運ばれて、あたしだけが目覚めて。

あの子は集中治療室から出てくることはなかった。


どうして希衣の代わりに死ねなかったのだろう。どうしてあたしが、希衣になれなかったのだろう。


ずっと、そんなことばかり考えていて、毎日涙が枯れることはなかった。何年たっても、ふとした時にまた思い出して泣く。


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