100年後も、君の代わりになんてなれない
「あれ、あたしそんなに感動するような話書いたっけ」
ベッドに横になりながら、リンクをタップする。たしかにそれは、あたしが昔書いたもので、しかもかなり初期のものだった。
こうも無気力に時間を過ごしていると、自分が書いた物語すら忘れてしまうらしい。
あたしは、十万文字近くある物語を読み始めた。
語彙力や構成、ともに酷いものだった。
だけども、そこには過去のあたしが伝えたい事や、今ではとても書けないような内容が溢れていた。
あたしの得意だった、命に関する物語。
まだそれほど経験したことの無かった苦しみを、いかにも知っていますよと言わんばかりの作品に、思わず笑いが込み上げてきた。
「本当に、何も知らなかったんだなあ」
自分の作品を笑いつつも、そんな無知で純粋無垢な過去のあたしが羨ましくて仕方がなかった。
だんだん、今までとは違った涙が込みあがってくる。
何も知らないあたしの話は、それでも誰かに何かを伝えたいんだと、必死に叫んでいるように思えて、自分の作品なのに泣いてしまった。