格上上司は初恋の味をまだ知らない。
「部長、出れません。」
「出す気ないって言ったら?」
「警察呼びます。」
頭2個分大きい彼が背中越しに扉、私、部長という体制で扉に腕をつく。ふんわりと昨日と同じ匂いがして胸がぎゅっと痛くなった。
吐息がかかる距離で耳元に顔を寄せる部長。
「ねえ、こっち向いて、沢渡。」
「無理です。」
「顔が見たい。」
「結構です。」
「じゃあ、」
これはどう?と、直接体に伝わってきたような気がした。
俯く私と、露わになった頸に小さくキスを降らせる部長。少しぽってりとした唇で首筋をなぞられてぞわぞわと背筋が震えた。
何でだろう…顔を見られるよりも何倍も恥ずかしい。
「嫌…やめて下さい。」
「じゃあこっち向いて?」
「…それも嫌。」
「強情だな。」
静かになったかと思えばチクッと頸に痛みが走った。耐えきれずに振り向くと満足顔の部長。
ああ、またやられた。
「ははっ、沢渡が怒ってる。」
「彼女でもない女に自分勝手に
キスマークつけないで下さい。
あなたのせいで胸元跡だらけなんですけど。」
「俺のものになる予定の女だからいーの。
それより他の所で脱ぐなよ。エロいから。」
「っ~~!!!!」
色んな意味で顔を赤くする私を見て楽しそうに笑う部長。 追い詰められた姿が愉快で仕方ないって感じだ。
これ以上されるとおかしくなりそう…。
「誰が''予定の女''ですか。
もういいから離れて下さい…。」
「じゃあ、晩御飯行くって事でいいな?」
「……はい。」
いつまで経っても退きそうになかったので、結局押し負けた。