格上上司は初恋の味をまだ知らない。


「…………。」




今何て言った?(2回目)




「ほぼ初対面の相手によく告白できるね。」

「何とでも言って下さい。好きです。」




ずいっと顔を寄せる後輩。吐息がかかる距離にいて顔が少し赤い。本当に好きなの?まだ3回しか会ってないのに?普通そんなことある?

じっと真顔で見つめると、暫くして痺れを切らした様子でふいっと顔を背けた。

…もしかして照れてる?




「返事はじっくり考えてください。
自分の立場を忘れないように。」

「もし断ったら?」


「その時は地獄を見ますよ。」




黒い笑みを全開に、見下ろす目は冷たい。あー脅されてるなーとは思っていたけどそこまで現実味がなく、ぼーっとただその目を見上げていた。

「こんな状況でも上の空ですか」と彼が呟いたその時には重なる唇。




「っ………!」




ぞわぞわと背筋が震えて突き放すと直ぐにパァンッ!と頬を叩く。




「最っ低…!」

「部長がキスしていいなら
僕にも権利があります。」


「あんたにも部長にも権利なんてないから!」




いつの間にか淹れたコーヒーからは湯気が消えていた。そんな事にも気付けないのだから相当動揺していたんだろう。

冷たいままコーヒーを運んでも、部長は何も言わなかった。
< 21 / 28 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop