友達イジメ
「良かったね。誰もコトネイジメのことを覚えてない」


自分たちのクラスに戻り、ホッと一息ついてそう言った。


「本当だね。これならもう1人イジメたって……」


「わかってる。スズの願いってなに?」


そう聞くと、スズは一瞬恥ずかしそうに頬を染め、それからまっすぐにあたしを見つめた。


「小説家になりたい」


そう言うスズは真剣だった。


夢を語るのは恥ずかしいけれど、その思いは確かなものだった。


「スズなら、なにもしなくても叶えられる夢だと思うけど」


そう言うと、スズは左右に首を振った。


「そんなに簡単じゃないよ。少し上手だとか、人気があるだとか、そんな子は山ほどいるもん。あたしなんて、埋もれちゃって誰にも気が付いてもらえない」


悔しそうに下唇を噛んでそう言うスズ。


そうだろうか?


スズの作品はどれも面白いし、あたしは好きだけれど。


スズがストイックなだけじゃないかとも思ったが、小説家の世界をあたしは知らない。


そんなあたしが口出しなんてできなかった。
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