友達イジメ
だけどその視線はまっすぐボールへ注がれたまま、力強くシュートした。


ボールは勢いよく相手チームのゴールネットを揺らす。


その瞬間はまるで世界がスローモーションになったような感覚だった。


すべての音が掻き消えて、世界にあたしとユウジしかいないような感じ。


次の瞬間、世界に音が戻っていた。


大きな歓声。


立ち上がって拍手する女子生徒たち。


仲間に囲まれて祝福されるユウジの姿。


そんな中、ユウジがこちらへ視線を向けた。


流れる汗を手の甲でぬぐい、そしてあたしへ向けて手を振ったのだ。


「サンキュ!」


声までは聞こえなかったけれど、ユウジはあたしへ向けて、確かにそう言ったのだった。
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