Love Eater Ⅲ
振り降ろされた刃は女の柔肌を裂き臓物を貫き鮮血を滴らせた。
少年の頭の中ではそんな顛末となる筈であったのに。
「まあ、あなたの髪はなんて柔らかいんでしょう」
「……」
そんなどこか嬉々とした言葉が響き、同時に両頬を包みにきた掌の感触。
逃げるでも叫ぶでもなく、真逆に近づいてきた女には流石に少年も意表を突かれて動きが止まっており。
そんな間にも女の指先はスルリスルリと少年の至るところを這って動くのだ。
そうして一頻り少年を探求し終えると、
「黄金色の髪に白い肌、薄紅の唇」
「………見えるの?」
「見えるわよ。汚れを落としたらもっと綺麗だわきっと。だから水浴びは毎日するべきよ?あと…少し痩せすぎね」
「……水が無駄。食料も」
「え?」
「僕に使うことが」
「………」
「僕は生きてるだけで無駄で厄介者なんだって。早く野たれ死ねばいいのにってみんな言ってる」
「そう、」
「だから、……殺されないならさ、」
「なあに?」
「殺してよ」
「……」
「あんたは化け物なんだろうってみんなが噂してた。不気味だって。おかしな呪いを使うんだって」
「……」
「化け物ならなんとも思わず僕を殺せるでしょ?殺してよ」
まだあどけない声音が響かせる子供らしからぬ欲求。
それには女もただただ黙して聞き入れるばかりで反応は読み取れない。