Love Eater Ⅲ


「わからないのは知らないから」

「…何…を?」

「色々。もっと周りに溢れてる沢山。楽しいとか、綺麗とか、美味しいとか、気持ちいいとか」

「…そんなの…知らない」

「うん、だから殺してあげない」

「……なんで?」

「あなたがまだ生きてもいないから」

「えっ…」

「だから、……私が今から生んであげる」

「っ……!!?」

言われるや否や、驚く間もなく急浮上させられた感覚には流石の少年の表情も驚愕に染まった。

浮上といってもなんてことない。

ただ女が少年の体をヒョイッと抱き上げてしまっただけの話。

少年からすればそれだけでも未知の行為と感覚であるのに、あろうことかその女は「さて、」と呟きつかつかと納屋の入り口に歩き始めるのだ。

それには流石に少年の思考も回帰するというもので。

「なっ……下せっ!離せっ!」

そんな抵抗の言葉とともにじたばたともがいてもみるものの、如何せん栄養不足で体力もない状態なのだ。

いくら相手が小柄な女といえど体力のない子供の抵抗に苦戦するはずもない。

結果、少年の体力が尽きる事の方が早く、更には腹の虫まで盛大に『ぐぅぅぅぅぅ』と鳴いてみせるのだから。

「フフッ、殺してほしいだなんて。ほらほら、体は生きたいって言ってるわ」

「っ…違うっ!言って…」

ぐぅぅぅきゅるるるるる~。

「っ……」

「あはは、とても素直な良い子みたいで嬉しいわママは」

「うるさいっ!ママじゃないっ!」

「ほおら、どんどんと子供らしくいきいきとして。……可愛い、良い子」

「っ……」

どんなに少年が抗って威嚇の声を上げても女を喜ばすばかり。

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