Love Eater Ⅲ
それ故にすでに二人の気力は砕かれており、最早花鳥の綴る言葉にこの事態の好転への希望なんて抱けない。
寧ろ、未だにどこか期待を持ったような眼差しでそこに在る花鳥の姿に虚しささえ覚えてしまう程に。
すでに希望を削がれ絶望の色が濃くなり始めていた場。
発する言葉もなく、ただ突きつけられた現実にどう感情を処理すべきかと黙していた瞬間。
『ねえ時雨、わかるでしょう?』
未だ終わらぬ花鳥の残像がまるで時雨を捉えているかのように空を見つめ、寂し気な笑みまで浮かべながら語りかけ始め。
『どんな結末になってもあなたの望む夜音は手に入らないって』
「……」
『いくらその遺伝子を持っていようが、容姿が似ていようが、私は私として生まれた別の人間だもの』
「……」
『出来る事ならあなたの愛する夜音になってあげたかった。愛してあげたかった。……でも、私は私だった』
「……」
無念であったと言わんばかり。
どうしてなのかと今も嘆いているかのように、花鳥の表情は悲哀を揺らして時雨を見つめる眼差しで心中を口にする。
そんな姿に百夜は力なく理解の微笑を浮かべるが、時雨は無表情に花鳥の姿を捉えるばかり。
花鳥の懺悔に悲しんでも見え、怒っている様にも見える無表情の真の心までは捉える事は出来ず。