Love Eater Ⅲ
「生きなさい」
「…えっ…」
「欲も知らずに死にたいだなんて駄目」
「……欲?」
「それに、生まれるからには無駄なんてものはないのよ。無駄だと決めつける視野の狭い他人なんて気にしなければいい。傍にいる必要もない。あなたも、無駄な部分より価値ある部分を探しなさい。価値ある居場所を探しなさい」
「かち?」
「…でも、あなたがそれをするにはまだ幼いわ。だから…今は私の子になりなさい。私に愛しまれ学ぶ事があなたの役目。生まれ落ちたばかりの無垢な赤ん坊のように」
「赤ん坊なんて泣くだけでなにも出来ないじゃないか」
「そんな事ない。少なくとも…母親は…私は癒されるし幸せだわ。子供が腕の中でどんどんと成長していくのを感じるのは」
「……僕はお前の子供じゃないのに。……やっぱりおかしい。…変な女だ」
「フフッ、そうね。変な女だわ。だから私があなたを連れ去るのは不思議な事じゃない」
「……変な女だ」
でも、嫌な感じはしない。
だけどもどこか少し擽ったい。
不快ではないけれど焦れ焦れと熱い感覚まで体を蝕み、悲しくもないのにほんのりと目頭まで熱くなりポロリと涙まで溢れ落ちるのだから。
今までは涙の一つでさえ不快だと蔑まれ嫌悪され痛めつけられてきた。
だから今のこの瞬間もうっかり溢れた涙には、焦りと畏怖から身を強張らせて構えてしまう少年であったが。
与えられたのは痛みの伴う罵声じゃない。
それどころかどこまでも温かく優しい指先の感触。