Love Eater Ⅲ



流星群など見たこともない少年からすれば、感情の爆発も収まる程衝撃的な自然の神秘。

いつもはただそこにあるだけの星が落ちてくるのだ。

今からとんでもなく恐ろしい事態が起きるのではないかと、畏怖して女に縋り付いてしまう程の驚愕であったのに。

「綺麗ね。まるで束の間の星の雨だわ」

星の光が流れる光景を見上げる女は、畏怖するどころか笑みを浮かべ感嘆の声まで響かせている。

そんな様子を捉えてしまえば少年の畏怖も緩むというもの。

そろりそろりと顔を上げ、改めて星の流れを映しこんでいれば。

「……時雨」

「……えっ、」

「あなたの名前よ。…だって星の時雨の夜に新しく生まれたのだもの。…うん、時雨がいいわ」

「………な…まえ」

「気に入らない?今までの名前の方がいい?」

「…名前なんて…持ってない。…呼ばれる時は『おい』とか『お前』とかだったから」

「じゃあ尚の事決まりじゃない。時雨。いい名前だわ」

「っ……」

そう告げて笑う女の実に凄艶な事と言ったら。

まだ未成熟な子供心でもドキリと心臓が跳ね上がってしまう程愛らしく美しい。

< 112 / 161 >

この作品をシェア

pagetop