Love Eater Ⅲ
「っ……邪魔だと……言ってるでしょうがぁっ!」
「きゃうっ!」
こんな風に声を荒げ、更には雑に少女を引きはがして放り投げるのも遠慮なし。
その扱いはまるでどこぞの狼男の如く。
そうして、少女が尻もちをついている間に、今度は全力で駆け出して逃亡を図るのだ。
こんな殺風景なところであんな少女の相手をするより、業火の燃える地獄で拷問をされるほうが幾分かマシというもの。
あんな女の我がままに付き合っていられるものか。
情に流され一つでも言うことを聞いてみなさいな。絶対にあれもこれもと要求が増え振り回されることは必至。
ああいう女なんですよ。
昔から。
愛らしい笑顔で人の弱みに付け込みあれもこれも手伝わされて。
気が付けば慈善活動にもつき合わされて。
馬鹿が付くくらいのお人好しにこっちがどれだけ振り回されたか。
何年も。
何十年も。
何百年もっ……………。
なん……百年……も……。
「あの……女に……」
気が付けば悪態の中に混ざりこむ記憶の片鱗。
衝動任せに感情を滾らせれば滾らせるほどその色は濃くなっていっており。
その混彩に僅かにも気が付いてしまえばあとは自然任せ。
何もせずとも糸は繋がり、どんどんと記憶は掘り起こされていくというもの。
良いものも、悪いものも。
自分が誰か。
彼女が誰か。