Love Eater Ⅲ
彼女が……だれか。
彼女は……………彼女はっ…
「や……」
「逝かすかぁっ、」
「ぐぁっ!!!」
ズドンッという効果音が正解か。
時雨が自ずと辿り着いた答えを口にしかけた瞬間、思いもかけない真上から少女の奇襲を受けたのだ。
これもまた……どこぞの魔女を彷彿とさせる如く。
当然構えてなんかいなかった時雨がその場で潰されるのは必然。
そして抱いていたセンチメンタルだとかが潰れるのもまた必然。
会いたかっただの恋しかっただの、百年を越す歳月で募らせていた情すら粉砕したこの衝撃は強烈。
今時雨の中に存在する情と言えばだ…。
「っ………なに……してくれてんですかぁっ!この馬鹿魔女がぁ!」
「あらやだ、私ったらつい衝動任せに。だってあなたが私から逃げようとなんてするんだもの」
「ええ、ええ、逃げたくもなりますよ。無鉄砲で非常識で馬鹿が付くぐらいお人好しなあなたからは」
「あらあらあら、これが世に聞く思春期?反抗期?すっかり成長しちゃって」
「思春期も反抗期もとうに越えすぎた中年…いや老人なんですが?」
「あらあら、あなたが老人なら私はとっくに死人だわ」
「……………それ…笑えないんですよ」
その、『あらあら、うふふ』をやめろ!
と、時雨が思うのも無理はない。