Love Eater Ⅲ
そんな言葉を最後。
どうやら伝えるべき全てを語り切ったらしい姿は初めてふわりと微笑んで見せ。
次の瞬間には花鳥の気配はさらりと消え、再び目蓋を下ろした六花の姿は地面に崩れ落ち動かなくなる。
ほんの束の間の出来事であった。
一時、夢の世界に落ち込んだような。
懐かしく、甘く、だからこそ切なく虚しい。
儚い過去の甘さに触れる夢。
自分達の愚かしさを再認識させられたような夢。
「本当…どこまでも自分勝手な小娘が」
少なくとも百夜にとってはそんな感情が満ち、今も鮮明に残る花鳥の声音に遣る瀬無いと哀愁を顔に刻んでしまうのだ。
遣る瀬無い。
でもそれはきっと自分だけではなくあともう一人。
それを確めるように、直ぐに百夜の意識が移ったのは同じ夢に引き込まれた時雨だ。
ただ、その感傷は決して百夜とは一致しないもの。
寧ろ百夜とは違い切なく虚しいばかりの物だったかもしれない。
それでも、百夜の視界で捉える時雨の後ろ姿だけではその心を完全に伺い知る事は出来ず。
「時雨、」
そんな呼びかけをして反応を伺ってみれば、ようやく佇んでいた姿はふらりと動きを見せてそのまま振り返る事なく歩み始めたのだ。