Love Eater Ⅲ
「まさか……最期の最期でこんな奇跡が待ち受けているとは思いませんでしたが。……会えてよかった」
また、その笑顔が見れて。
触れることが出来て。
「……『また』があるのかもわかりませんが……会えたらいいですね」
白い柔肌の頬をひと撫で。
最後の抱擁としては一番後を引かずにいられると思ったものだったのに。
どうしても、その目を見てしまえば名残惜しくなる。
自分の中でけじめをつけているつもりでも離れがたくなる。
それでも『行かねば』と、ようやく時雨の指先が夜音の頬から離れた瞬間。
「ねえ……雰囲気出してるところ申し訳ないけれど、……本当にどこに行くつもり?」
「………はっ?いや、だから……私が担う刑を受けるべくあちらに……」
あれ……。
……さっきまでの人の列……どこに行った?
「残念だけども、時雨はもうあちらに渡れないわよ」
「っ…はぁっ!?」
「だってもう見えないんでしょ?人の列も渡るべき川の場所も」
「なっ……だって僕は死んだんでしょう?さっきの列も死人の川渡りであったのでしょう?死者の国とやらがあるということは生前の罪の有無を裁きしかるべく刑罰もあるんでしょう?」
「諸々…ええ」
「だったら僕もまた地獄に落ち受けるべき罰がある筈でしょうが!?」
「あるわね。でも…地獄の刑場よりもっとずっと最悪な場所にあなたは投獄され罪を償うの」