Love Eater Ⅲ
時雨にとって夜音との記憶は一片たりとも失いたくない自分を構築した全てであるのだ。
それが知らず知らず失われているかもしれないような刑場で永久に罪を償うのだ。
それもまた、迷える魂を救うために。
他者の為に。
散々、他者に尽くすだけ尽くして、その結果夜音を失った時雨にとって再び他者の為に尽くさねばならぬこの罰はまさに拷問。
「……はっ……本当……とんでもない場所に引きずり込んでくれたものですね」
「だって、あなたが苦痛を覚える事なんて私の事だけでしょう?あなたの生きる理由で全てだった私を忘れるかもしれないなんて、死よりも恐い罰でしょう?」
「最悪ですよ。更に、何が悲しくてまた他人の面倒を見なくてはいけないのか」
「フフッ、昔みたいね」
「本当……死んで尚自分勝手で人を振り回す嫌な女ですね」
「フフッ……だって魔女だもの。それに……これからは忘れてもお互いがお互いを思い出させてくれる。忘れても新しい記憶がそれを補ってくれる」
「………はあ……あなたに拾われたのが僕の運の尽き。……仕方ないですね、死ならば諸共、一蓮托生。永久に…お付き合いしますよ魔女様」
「ええ、私の我がままに一生困って傍に居て」
〝愛してるわ〟
〝母として、姉として?〟
〝フフッ……今は、女として強く深く〟
〝………本当…ずるい魔女様ですね〟