Love Eater Ⅲ
「ソールト、……終わった?」
「………ああ、終わった。……いあ、始まってんのかね…」
時雨への刑を執行した直後。
まだ硝煙の匂いが漂う中、横たわる時雨の姿に神父らしい黙祷を捧げた直後、遠慮がちに響いてきた六花の声。
それに振り返り笑っては見せるソルトだが、浮かぶ笑顔に覇気はなく。
六花もその心中を汲み取ってか、静かにソルトの傍に寄るときゅっと背後から労う様に抱きしめていく。
「……始まってるよ、きっと。僕と血がつながってる魔女さんなんだから。…きっと強欲に貪欲に捕え置いて離さないよ」
「フッ……確かになぁ。どうも…お前って魔女の血筋はおっそろしい程貪欲だから」
きっと今頃夜音の魂と再会を果たし、あの牢獄で今度こそ二人で過ごしていけるんだろう……永久に。
願わくば……幸せに。
「はんっ、せいぜい迷える魂の導きにひーひー苦労して、夜音といちゃつく暇なんてなければいいんだ」
「っ~~六っ花ぁぁぁ、お前って奴はぁぁぁ、死者を偲ぶって感覚がないのかっ!」
「お言葉ですけどねぇ、何で僕をぶっ壊そうとした奴をわざわざ偲ばにゃならんのよ!?なんなら今その横たわってるお綺麗な顔にぐーぱんの一つでもかましてやろうかってくらいに怨み辛みで満ちてますけどぉ?」
「そ、その気持ちはわからなくもねえ…けど……」
「大体ねえ、ソルトはお人好しすぎるんだよっ!何で自分をぶっ殺しかけた相手の為にこんな役目引き受けちゃうかな!?幸せなんかを願っちゃえるのかな!?」
「いや……だって……」
「だって、なにさっ!?」
「……………お前と似てるんだもん。…時雨様」
六花の言い分もわからなくもない。
いや、わからないどころかどれが正常な感覚だろう。
自分を貶めた相手にどうして慈悲の心で動かねばならぬのかと。