Love Eater Ⅲ
勿論六花だって嫌悪一色での本心ではないのだ。
未だに腹も立って許せもしない。
それでも、どうしてか憎み切れずに同調する心もあって複雑なのだ。
ソルトであってもされた理不尽なることには不完全燃焼な憤りもある。
それでも、どうしても時雨の辿ってきた生き様や性質が六花のそれと類似して。
一つ間違えば六花もまた時雨のような道を辿ってはいたのではないかと。
そんなことを思ったら少しでもその心が救われる方に導いてやりたくて。
だからこそ、あの時……。
『時雨という男を殺してこい』
『……そっ………そんな事出来るわけな…』
『誤解するな。殺すというより……魂を回収して投獄する手伝いをしろって事だ』
『それって……その魂の抜けた肉体ってのは…』
『死ぬな』
『っ……誤解も何もねえじゃねえかっ!死ぬんじゃん!殺しじゃんっ!何でまた俺が処刑人なんかにっ…』
『……夜音の頼みだ』
『っ……えっ?』
『お前みたいなお人好しにあいつを終わらせてほしいんだと。それがきっと一番あいつが安らかに終われる相手だから。……終わらせて、その魂を自分と同じ場所に投獄させろって。あいつにとって忘却が何よりの罰でもあるだろうって俺に要求してきたんだよ』
『…同じ…場所に』
『夜音とは投獄の際に一つ約束をしてたもんでね。もしあの場所で記憶を失わずにいられたら、または失っても思い出すことが出来たなら一つだけ釈放以外の恩恵を与えるってね』
『それで…時雨の魂を』
『【釈放】の要求でない限り有効だ。どうせそろそろとっ捕まえなくてはと問題視していたところだしな』
『………』
『このまま生き続けたところで今生ではあいつが報われることなど一生ないぞ?夜音の魂とはあの牢獄でしか再会は叶わないのだからな。……さあ、どうする?』
だからこそ、魔王の命を引き受け夜音の下へと魂を投獄させる処刑人となったのだ。
あの迷える魂達をめぐり合わせる為に。