Love Eater Ⅲ
救いたかった。
救えなかった。
もう、何も間に合わない。
そんな後悔と失意の絶望一色に染まりかけた刹那。
「なーに、百夜サマらしくなく人間くさい感情さらけ出してんですか」
不意に悲観を裂くように響いた楽観的声音。
今までの事などまるで見ていなかったかのように。
そして、どうして声をかけられるまでその存在も気配も忘れてしまっていたのだろうか。
「蓮…華、」
その存在を。
「何をそんな悲観に暮れる事がありますかねぇ?次にするべき事は分かったわけでしょ?」
「……しようにも不可能だ」
「これまたぁ。百夜サマらしくない」
クスクスッと百夜の失意を笑う蓮華にはこの現状が視えていないのだろうか?
そんな疑問と戸惑いに百夜の反応も途切れてしまえば、蓮華はヤレヤレと肩を竦めつつもようやくその結論を口にし出す。
「どこも不可能じゃない。寧ろ、簡単な話じゃないっすか」
「簡単?」
「古今東西、お姫様の呪い解除にはは王子様の愛が必要って話でしょ?」
「それはそうだが……」
「行かせりゃあいいんですよ。ちょいとばかり獣臭い王子様をね」
「………っ……まさか、」
「気配もなく動くのは俺の得手だって忘れてました?」
百夜の理解が追いつくのが遅れたのも当然。
寧ろ今であっても半信半疑の予測であるのだ。
信じられないと。
あり得ないと、変に希望を抱くのを恐れて言葉にすら出来ずにいるのに。
そんな百夜の戸惑いや疑惑を蓮華はさらりと笑い飛ばしながらその両手を百夜の目前に見せつけたのだ。
指輪の一切ハマらぬ両手を。