Love Eater Ⅲ
「本来俺の場合能力制御の指輪を外す事は危険視されてて規約違反になるんですけどね。まあ、こういう緊急時でしたし上も見逃してくれるでしょ」
「と、言う事はリッカは、」
「死んじゃいない筈ですけどねぇ。命が尽きれば途絶えるのが俺の糸。少なくともそれは繋がったままだ」
「それにしたってよくあの出来事を予測して構えていたもんだ」
「当たらずしも遠からず。別にあの全てを予測してたわけじゃないんですよ。俺はね単に何事にも無興味であり何事にも意識が分散しやすい。だから、みんなが一つの事に意識を集中している中でも俺の意識はその他多くも捉えて構えていられた。それだけです」
「っ……じゃあ、時雨が生死を確めた際も、」
「一瞬仮死状態に神経をね」
ちょいと操りましたと指を動かし笑って見せる男の実に緊迫感のない姿と言ったら。
それでも、少なくとも今はそのマイペースな様は百夜の心を立て直して安堵を与えてくれる。
「とはいえ、本当に死んで無いってだけの状態なのは事実っすよ。最初の一発はかろうじて急所を外す様に糸を張るので精一杯。あとの三発に至っては内臓に至らぬ位置で留めましたが最初の一発が心臓近くの血管を損傷したのは確か。いくら魔混じりのタフな身体と言ってもあの出血量じゃ正直危うい」
生きてはいる。
それでも確実に死に近い状態で。
そんな事実を語る蓮華の顔には流石に楽観的笑顔は見当たらず、寧ろソルトを捉える眼差しはどこか不安が入り混じっても見えるのだ。
「蓮華、迷惑ついでにもう少し迷惑をかけるぞ」
「フッ、高いっすよ?」
そんな掛け合いの直後、百夜が行動を起こすより早く、蓮華の方が百夜の方へと身を屈めていく。
まるで何を求められているのか分かっているように。
仕方ないという蓮華らしい笑みを浮かべて百夜の傍へと身を寄せたのだ。