Love Eater Ⅲ
あの瞬間だ。
六花が腕を掻き切って己の再生能力を示した時。
隣にいたソルトは1番にその鮮血を浴びており、顔面まで及んだそれは口内にまで。
そんな意図としない力の僅かなる譲渡がソルトの命をギリギリで繋いでくれているらしい。
「六花の能力が入り込んでいたのは好都合。しかしながら、極少量故に回復速度は随分と遅い。きっと再生の効果もこれきりだろうて」
なんにせよこの状況では唯一の希望、唯一の頼み綱なのだ。
「それにしても、危うい事には変わりないな。魔物の血で生きとめておるが人間としてはほぼ死にかけておる。どれ、僕も僅かながらに力を貸そうか」
幸か不幸か今は悩ましい問題であった魔物の血によって生かされている。
それなら魔物の方の生命力を助成してやろうとソルトの胸に手を置き、百夜は自分の乏しい魔力を分け与え始めるのだ。
当然、輸血にも近い感覚のコレは百夜から再び生命力を奪う事にはなるのだが。
「…早く戻ってこいリッカ。仕方ないから惚気話にも付き合ってやる」
そんな呼びかけと共に、今は惜しみなくその魔力をソルトに与えていくのだった。