Love Eater Ⅲ





〝ここは…何処だ?〟





そんな疑問が最初。

その疑問のまま、どうやら倒れ込んでいたらしい体を起こせば捉える景観はどこかもの寂しいもの。

だだっ広い平面の景色の配色はまるで古い映画のようなモノトーンで。

あるものと言ったらやはり色味のない草原とたった一本流れる川と。

自分の他は誰もいない。

そして不思議な程に無音な状態。

足元には草もあるのに。

近くで川がせせらいでいるのに。

なのに耳が痛くなる程の無音であるのだ。

そんなところに気がついたら1人。

ポツネンと立ち尽くしているのはソルトの意識である。

最初こそただ呆然と周りの景観を認識していたが、徐々に思考も働き始めるというもの。

この場所がなんなのか。

なんでこんなにも色彩が乏しいものであるのか。

なんでこんなにも無音であるのか。

なんでこんなところにいるのか。

そもそも、……自分が誰で何をしていたのだろうか?と。

自分の顔の造りでさえ思い出せないと顔に触れながらヨロリと歩みだしたのだ。

そうして近づき覗きこんだのは川の水面で、映り込む自分の姿を見れば何か思い出すかもと思ったのだが。

「……なんだ…コレ…」

確かに見下ろす水面にどうしてか自分の姿が映らないのだ。

なんでなんでなんで?

どうして?

どうした?

俺は誰で…何が起きた?

そんな戸惑いに満ちるのも当然。

焦って周りを見渡そうが先程と同じ光景が広がり不安を煽るばかり。

そうして再度見下ろそうが全く何も映してはくれぬ川のせせらぎ。


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