Love Eater Ⅲ
こんな不可思議な状態に置かれていれば、嫌でも一つの結論のようなものがチラついてしまうものだろう。
「俺……死んだ…のか?」
自分が誰かは知らない。
何をしていたのかも知らない。
それでも、この空間が通常でないことは充分に理解している。
ここの生気の無さは充分に。
ここはあの世という場所ではないだろうか?
だから不必要な記憶などを持ち合わせていないのではないだろうか?
やっぱり…死んでる…のか?
………いや、
ダメだ。
戻らないと。
生き返りたいと言う我欲というより戻ってやらないと。
あいつにあんな顔させてっ_…、
「……あいつって……誰だ?」
確かに今懐かしく恋しい何かが過ったと思うのに。
それを明確な形として留めおく事は出来ずにさらりと消えていってしまった。
それでも、何か落ち着かない。
心が騒めいて、不安で、痛くて、切なくて。
何でなのか。
何も思い出せないというのに早く戻ってやらねばという感情がソルトを煽るように蝕んでいく。
何でなのかも、誰の為なのかもわからない。
それでも、
「戻ってやらなきゃ」
そんなたった一つの意思だけに突き動かされようやく水面に背を向けたのだが。
直後に視界に飛び込んできた人姿には馬鹿正直に驚愕しビクッと体を跳ね上がらせてしまった程。
だって、気配が無かった。
こんな背後に迫っていたのにまるで気がつかなかった。
それに一体どこからやってきた?
それにどうして……『似てる』そんな感覚に陥ったのか。