Love Eater Ⅲ
自分よりソルトを優先する事は彼女にとって当然の役割であったのに。
どうしてかこの目の前の男は自分の事を顧みずに他人の事を優先する様な事を言ってくる。
普通であるならさっさと全てを思い出して現実に帰るなりしたいだろうに。
そもそも何の利益があると言うのか。
意味がわからないと彼女が戸惑うのも当然であるのだが。
そんな心中などまるで知る由もないソルトといえば。
「どうせ分からねえしって手放して諦めちゃ駄目なんだろう?だったらせっかく都合良しに俺みたいのが迷い込んだの利用して色々な感情吐き出してみろよ。人間忘れてても何かの会話の弾みに記憶に触れる時もあるってもんだろ」
「っ……」
こんな風に完全に立場逆転に迷える彼女をどうにかしてやろうと聞き手に回り始めるのだ。
なんてお人好しすぎる男であるのか。
そんな呆れにも似た感情も確かに過ぎるのに、愚か者だとは否定出来ない。
寧ろ…、
「……変な人ね」
失笑混じりにも肯定し、乗ろうじゃないかとその場に腰を下ろしてみせてくる。
「おっ、初めて笑ったな」
「そりゃあ、私だって笑うくらいするわ。…まあ、最後に笑ったのがいつかは覚えてないけれど、」
「でも、笑える奴だったってことだ」
「……そうね。本当…そうだったみたいね」
そんな事忘れていた。
こんな話をしなければ自分が笑える人間であったなど振り返る事もなかった。
この人が来なければ。
この人のお人好しがなければ。