Love Eater Ⅲ


「あなたってきっと苦労を背負いこむ人なんでしょうね」

「さあ、どうだったんだろな」

「きっとそうよ。本当ならこんなところから早く出たいと、思い出したいと焦る筈だもの。それなのに私に縋るどころか真逆に私を導こうなんて思ってる。…損する人だわ」

「ははっ、そうなのかな?」

「そうよ」

「でも、そう思うって事は、あんたに俺みたいな損する人間の記憶があるって事じゃね?」

「……そ…うね。…そうよね」

「あはは、ほらな?話してみるべきだ。いい具合に記憶を掠めてるじゃんか」

確かにその通りだ。

彼女が思っていた以上に。

特別思い出そうとする会話をしたわけでもない。

寧ろ、ソルトに対する見解を語ったに過ぎないのに、気がつけば自分の失った記憶まで便乗して刺激されている。

私は…こんな人を知っている。

確かによく知っている。

お人好しで、自分を顧みなくて、傍目からすれば損をしてみえる。

よく…知っている。

よく、似ている。

「……私…あなたに似てる人を知ってるわ。お人好しで損をしていて、それでも…世話焼きをやめられないの」

「へえ、」

そう、その人もそんな風に笑うの。

決して自分が得る利得はないのに、どうしてか目の前の迷える存在を捨て置けなくて。

自分の事は二の次。

ただ、相手の救いとなる事が生き甲斐で、1人でも多く笑っていてほしいと手を伸ばしてしまう。



〝    は、人が良過ぎですっ〟

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