Love Eater Ⅲ
流石に戸惑いに耐え切れなかった彼女が改めて口を開き、
「ねえ、早く帰ってあげて?」
そんな再三の促しをしてみたのだが。
「………戻るよ」
「そう、じゃあ、早く…」
「だから、早くあんたも思いだせ」
「………えっ?」
「俺に似てる奴ってのがいたんだろ?早くそいつの事だけでも思いだせよっ」
「…………………っ!?ちょっ…ちょっと待って?……まさか…私の為に戻ろうとしてないって事?いやいやいや、いいの。私は本当にいいから早く現実に戻っ…」
「嫌だね」
「なっ……」
「あんたのあんな悲痛な姿を見たんだ、それなのに俺一人思い出して『じゃあさよなら』なんて出来るか!どんだけ目覚めが悪いと思ってやがる!」
「私はっ……」
「俺がほっとけねえんだよっ!!」
「っ………」
なんて、強引な人なのか。
本人がいいと言っても納得しないなんて。
本当なら今直ぐにも戻りたいくせに。
なんでそんなにも自分を蔑ろに人を助けようとするのか。
〝なんでそこまで他人を助けようとするんですっ〟
ああ、またあの声だ。
今度はどこか必死さの混じる…今にも泣いてしまいそうな。
さっきのあどけなさからは抜けた少年の声音。
ごめん…ね。
ごめんなさいね。
そんな感情に満たされてしまう。
切なる声音だとわかっているのに。
必死で私だけなのだと訴えにくる声音なのに。
……私…だけ?
私に向けた…声音。
あの子が…。
私……は…、