Love Eater Ⅲ




静寂の夜に柔らかい風が優しく木々をざわめして遠のいていく。

心地の良い風に自然の優しい音色。

見上げれば雲一つない濃紺に数多の星が散らばり輝きを見せているのに。

その下では硝煙が漂い、血溜まりが広がり。

誰1人として動く事なく、思考さえ忘れた姿に見えるのは絶望感ばかり。

中途半端に開かれた口から漏れるのは呼吸ばかりで音はなく。

自然の音がクリアに響き渡るほど人の気配が不動になってしまっている状況となっていた。

それでも、放心する面々の耳には自然の響きなど微塵も届いてはおらず。

音を拾う事を忘れた鼓膜が脳に伝えるのはつい僅か前の三発の銃声なのだ。

耳に痛いほど刻まれたそれは視覚にも鮮明に惨劇を焼き付けている。

すでに身動きなどしていなかった姿への無情なる追い撃ちはどんな気丈さも打ち崩す衝撃的なもの。

あの百夜でさえその衝撃にまともな思考も回復せずに固まっているのだ。

そんな惨状に、まさに引き金を引かされた六花がどうして心を保っていられようか。

抵抗の叫びを上げていたその口は最早音を発する事を止め、開き切った双眸は瞬き一つせず無機質なガラス玉の様に光を反射させ。

現実を受け入れる事を拒み震え切っていた身体ももう微動だにしない。

ただ唯一、抗っていた名残として溜まった涙が頬を伝うばかり。

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