Love Eater Ⅲ
当たり前に会話を為していた中不意にその存在を思い出させたのは彼女自身。
「あなたが記憶を取り戻したから本体の深層に繋がったの」
「じゃあ、戻ってなかったら…」
「あなたの本体は意識不明のままだったでしょうね」
「………って事は、……ん?つまりだ、あんたもまた俺の前にある姿ってのは誰かの意識体って事か?」
「そうね。私の場合は…罰としてここにいるのだけど」
「それ、さっきも言ってたよな?罰って…」
『ああ、そうか。お前か。罪を犯したってアイツの妹は』
代わる代わる。
ソルトと彼女との会話に今度その存在を差し込んできたのは百夜で。
どこか口重くなりかけた彼女の代わりとばかり、思いだした存在の詳細を口にしたのだ。
それでも、ソルトからすればまだどこか置いてきぼりな事情。
その具体的な詳細を求めるように彼女に視線を戻したのだが。
哀愁の微笑みを捉えた刹那にはトンッと突き飛ばされていたソルトの体。
抗う余裕もなく背後に倒れていく中で捉えたのは彼女がこちらに向かって何かを呟いている姿で。
それでも次の瞬間にはバシャリと水に沈む感覚に全て消えてしまった。
ああ、そうか。
後ろには川が。
あの人が何を言ったのか聞こえなかった。
それでも…。
ありがとう。
そう言われた気がする。
水中に沈む感覚に不思議と息苦しさはなく、それ故にそんな思考が巡りながらソルトの意識は遠のいていったのだ。
〝私は……、〟
あんたは……誰だったんだろうな。
罪とか罰とか……、そんな悪い人には感じられなかったのに。
それよりももっと静かで清らかで…儚くて…。
俺と似て……目の前の姿を見捨てられない不器用だけど誠実そうな人。
あれ…、
これ……どこかで…。
「おい、起きろよ寝坊助」