Love Eater Ⅲ
あれ…俺どうしたんだっけ?
沈んだと思ったのになんか浮上してる感覚にも感じる。
なんかフワフワと…夢現な…。
そんな感覚の最中であったのだ。
全ての感覚を覚醒させるような百夜の声が響いたのは。
その瞬間に衝撃を受けたようにソルトの目蓋は開かれ、久しいと感じるまともな光と色彩を感じ取ったのだ。
艶やかな白銀、妖しい藤色に薄紅。
そしてどこか嫌味混じりな微笑。
「百…夜…」
ああ…、百夜だ。
俺のよく見知っている。
…よく…見知ってる…子供の姿…の。
あれ?
大人バージョンは?
なんて寝ぼけ眼でぼんやりとしていたのが運の尽きだったのか。
「だから、いつまでも呑気に寝腐ってるんじゃないっての」
「ぐっ…!!」
再度の呼びかけには物理攻撃も加わって、百夜の華奢な細腕の肘がドンっとソルトの腹につき降ろされたのだ。
こんな寝起きの不意打ちはどんな屈強な人間でも「おふっ」となってしまうものだろう。
ソルトもまさに目覚め一発で再び意識を飛ばしかけるところであった。