Love Eater Ⅲ
死にかけても自分の事は二の次なソルトの性分には、何を言ってるんだこのお馬鹿さんは。と百夜も呆れた眼差しを向けてしまうほど。
「本当、リッくんの世界は他人によって回ってるよ。さっきもどうせまたお節介のひとつでも焼こうとしてたんだろう?」
「さっきって……あっ!彼女!!そうだよ、置いてきちまった!うわぁぁ、大丈夫か?ちゃんと思い出せたんかな!?」
「……まあ、お節介はリッくんのいいとこではあるんだけどねえ」
色々物申したい気もするがそれによって救われている人間が多いことも確か。
特に、ソルトがあって六花が生き延びてきたのだからして。
百夜からしてみれば、感謝こそあれ非難するなんて出来るわけもない。
それでも、
「お節介やお人好しなんて善行も紙一重で悪になるってもんだからね」
その忠告だけはしておきたいと、馴染みの煙管を咥えながらおふざけのない眼でソルトを見据えてくる。
そんな眼差しと紫煙の揺れには、ああ、今更だが現実だ。なんて事をソルトも改めて思うのだ。
あの甘ったるい百夜の煙管の匂い。
本当に今更なんだが確かに生きてここに戻ってきたのだと実感する。
そうした余裕からようやく周囲にまで意識が走れば、捉えた景観はどうやら百夜の研究室なのだ。