Love Eater Ⅲ
確か、中庭にいた筈なのに。
そもそもどうして自分が生き残れたのか。
何故百夜がまた子供の姿であるのか。
時雨は?
六花は?
疑問は尽きずにいくらでも湧いてくるのだが、
「……あの彼女は…誰だ?俺の只の夢じゃねえよな?」
やはり捨て置けないと、一番手元の記憶から手をつけ始めてしまうのがソルトというタチ。
それを百夜も十分にわかっているからこそ、やれやれと思いつつも問いに素直に答えるのだ。
「…あの女は言わば罪人。罰としてあの場所に魂が幽閉されてる……らしい」
「らしいって」
「いや、僕だって聞き齧った程度で面識があるわけじゃない。でも、泣く泣くの投獄だったって酔っぱらう度にあの馬鹿は言ってたな」
「いや、話が見えねえし。そもそもその情報源らしい酔っぱらいの馬鹿って誰だよ?」
「ん?あの女の兄で現魔王な僕の飲み友達」
「………………………突っ込みどころ多すぎるっ!!いやいやいや、何っ!?お前魔王と飲み友達なのっ!?ってか…えっ?魔王とかってリアルにいるのやっぱり!?」
「そりゃあ、いるだろうさ。どんな世界だって統治する者は必須だろうて。まあ、魔王なんて肩書きが大仰に聞こえるんだろうけどね。魔族を統治する代表ってだけで大半の人間が思い描く感じの王座について勇者と戦うようなそれとは違うから」
「あ…なんか、そういう風に言われると変に親近感。統治者ね。……ってのは、まあ置いといてだ。つまりえっと…その魔王の妹が…彼女?」
「らしいね」
「そこはまあ理解したとして。なんで彼女はあんな所に?罪とか罰とか…、そんな極悪人に見えなかったぞ」
「そうだねえ。彼女の罪は聖人の様なその性分だからって話だよ。汝隣人を愛せよ。そんな清らかな精神の魔女であったらしい」
「益々分からねえ。何でそんな彼女が罪人なのか」
「僕も詳しくは聞いてなくてねえ。ただ、善意と悪意は紙一重だと、それが彼女の罪だとアイツは言ってたな」
今だってソルトの脳裏に鮮明な姿。
見るからに悪意なんてものとは無縁に近い様であったのに。