Love Eater Ⅲ


そんな心での危険予測に逃避しかけていたが、不意に小さく響いた失笑には見事意識を引き戻される。

今の今まで人形の様な無表情を浮かべていた花鳥がクスリと控えめに笑ってソルトを見つめているのだ。

「やっぱり、あなたで良かったとしみじみ思う」

「……えっ?」

「あの子に名前を与えてくれたのが。…あの子を人にしてくれたのが」

ああ…母親だな。

そんな事を無意識に感じてしまう様な実に柔らかな花鳥の微笑み。

これなどこが母親失格だよ。

寧ろ六花が愛おしくて仕方ないと言わんばかりに見えるのに。

「……なあ、聞いてもいいか?」

「なあに?」

「…あんまり、他人の込み入った事情を詮索するのはガラじゃねえんだけど、」

「……百夜に生きてて欲しかったから」

「へっ?」

「多分…あなたが知りたい話の結論」

きっとこれでしょう?とばかり。

ソルトが問うより早く告げられた結論と笑みは柔らかくて悲哀は僅か。

その表情から多少の未練はあれど後悔の様なものはないのだと充分に理解できてしまう。

そう、後悔はないのだ。

花鳥に自分の死を選択した後悔はない。

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