Love Eater Ⅲ
「残念ながら私は元々が不完全な生体だからこの血を持ってしても限界に尽きてしまったけれど。それでも、この力は…夜音の力は強大だわ」
「そうだろうな。なにせ血一滴で致命傷だった俺が数時間でこの状態だ」
「夜音はそれこそ不死とは言わずともそれに近い本物の魔女であったの。今の魔女なんて呼ばれる者達とは比べものにならない真性の魔女」
「つまり…今の混血の魔女とは違い魔物の血筋」
「彼女はその血を彼等に分け与えていたの。たった一滴であるなら単なる万能薬に過ぎない。効果は服用した際の体の不具合を治癒してそこで終わりの筈だった」
「筈だった…。でも、違ったんだな?…それが今の魔女の発生に繋がってる」
「……その通りよ。決して全ての人間がではなかった。だけど、治癒した人間やその子孫に不可思議な力が芽生える様になってしまった。命を救われたのだからとその力を受け入れた人もいるわ。でも、理解が及ばない力に恐れる方が大半であり正常だわ」
「だから…魔女狩りにあった」
「…いいえ。それも原因であるけれど彼女が殺されたのはもっと理不尽な理由」
「理不尽?」
「すでに死んだ者を生き返らせろと言われ、出来ないと断ったから」
「なっ…」
「治癒は出来ても蘇生なんて事は彼女じゃなくても出来ない事よ。だけど、相手が悪すぎた。申し付けたのはその土地の領主である貴族の男。その息子を助けてほしいと頼まれ彼女は出向いたけれどすでに息を引き取っていたの」
「それを生き返らせられなかった腹いせに魔女として処刑したってのかっ!!」
そんな理不尽で勝手な理由があるかっ!!
夜音に非などないのに。
出来ないものを出来ないと言ったに過ぎないのに。
確かに結果として彼女の救済行為が魔女の因子を撒いてしまったのかもしれない。
それでも多くの命を繋いだのは事実であるのに。
それを都合よしに断罪する悪意理由として用いて彼女を殺すなんて。