Love Eater Ⅲ
そんな理不尽な理由で最愛の人を失った時雨の絶望や憤りはどれほどのものであったのか。
ただの人の子であったものが何百年もかけ妄執と成り果てる程のもの。
今更だ。
どれだけ感情移入し理不尽に憤りを滾らせようとその時間に介入できる話ではない。
それでもやるせない感情から強くキツく拳を握ってしまうソルトがいるのだ。
ソルトもまたお人好しであるから。
「……時雨は…どうして人間じゃなくなったんだ?」
「……夜音の魂と再び巡り会う為、夜音の血肉を食らったから」
「っ……食らった!?」
「血一滴で不治の病を治す万能薬よ。その夜音の血肉ともなれば人間の限界の潜在能力を超える事は容易いでしょうね。そうして、時雨は人をやめて何百年も夜音を探しているのよ」
「それは……理屈としてはわかるけど食らうって…。それによくそんな荒業に辿りついたと言うか…」
「夜音がそれを促したのよ」
「えっ…」
「〝私を待っててくれると言うなら〟そう言って」
「……それから何百年も、」
なんて途方のない話であるのか。
輪廻転生があるとしてもそれがいつかだなんて予測などない。
信じて縋り掴めるものもたった一つの約束ばかりなのだ。