Love Eater Ⅲ
そんな唯一の約束さえも時間が経つほどに、縋って握り締める度に色は褪せ脆くなってくる。
それでも意味のなかったものには出来なくて。
どんな形であれ、少しでもその色を保たせようと躍起になることで、憤りや悲哀や焦燥から罪悪から全てが入り混じって雁字搦目となってしまったのだ。
「時雨がああなってしまうのも無理はないの」
「……」
「…だから…私は彼を憎む事が出来ない」
「だから、俺にもこんな話をしたんだな?少しでも時雨を理解して欲しくて。…した上で結論を下すように」
「だって、私はやっぱり時雨を愛してるんだもの。親を愛さない子はいないでしょう?望んだ物とは形は違ったけれど間違いなく愛してくれた人だもの」
「フッ…百夜が聞いたら妬くんじゃねえの?」
「フフッ…妬いてくれるなら本望よ」
ああ本当に、花鳥は純粋に時雨を愛してるんだな。
今も尚。
時雨の妄執の果てに悪戯に生み出されてしまった存在であった筈なのに。
そんな事をソルトが感じてしまうほど花鳥の時雨への恨み辛みは皆無。
寧ろ、思い慕う感情の方が鮮明で、時雨を心底案じる姿は実に美しいくらいであるのだから。。
百夜も花鳥のこんな純真なところに絆され惚れ込んでしまったのだろうか。