Love Eater Ⅲ
きっと、欠陥だらけだと自負する花鳥も幼い頃の六花の様であったのだ。
生に対して自分からの欲はなく、与えられるものだけで漠然と生きていたような。
それを本当の意味で息吹かせたのは時雨ではなく百夜の方。
「私は不完全な欠陥品ではあったけれど、それなりに魔女の素質は備わっていたのね。我欲が芽生えたら能力もどんどん成長したの。まあ、それでも私の寿命の長さばかりは変わることはなかったけれど」
「つまり、…その繁殖機能ってやつも、」
「無意識に抱いた欲が知らず知らず魔力に作用して自分の身体をそれなりに変化させていたのね。だから身ごもっていると気が付いた時は百夜も私もかなり驚いたものよ」
「そ…そうだろうなあ。妊娠しないものだと思ってた中での発覚なら」
「フフッ。私は驚きはしたけど焦るより強く嬉しかったわ。だって、こんな私でも生きた証を生み出し残す事が出来るのだもの。…ただ、百夜の方は手放しで喜んではくれなかったけれど」
「それが、百夜に呪いをかけた話に繋がるのか?」
「……そうね。極論を言ってしまえば、私の乏しい命の延命を取るか、この子の命か、そんな天秤の話だったのよ」
「それは…」
百夜にとっては決断のつかない苦渋のものであったのではないだろうか。