Love Eater Ⅲ
花鳥の事を誰よりも理解している時雨だ。
その欲求や意志は出来る限り尊重してやりたかった事だろう。
それでも、花鳥の命がかかっているとなれば話は別だ。
勿論、その寿命の幅の短さだって分かっている。
自然に反して活かしている命だと自覚もあり、自然の摂理に添うなら延命などするべきでないことも。
理屈などいくらでも分かっていても理屈通りにいかないのが感情であり、愛情であろう。
間違っていると頭の隅で思っていてもどうしても手放せずに傍に置くことを望んで選んでしまってその時間となっていたのだ。
それが、こんな顛末に結びつくとは努々思わず。
「私一人生かすにも相当な魔力が必要なの。それでも魔力は体力なんかと同じで休めば回復するから百夜の生命に差支えるような事はそれまでなかった」
「でも…妊婦となれば違うわけだ。ただでさえ生命力を必要とする状態。しかも六花は、」
「イーターだった。……そう、それが一番の問題だったのよ。イーターと言っても魔力が生命の糧というわけじゃない。魔力を食らうか否かも自己判断の内だわ。でも…」
「赤ん坊に判断もくそもねえわな。それこそ本能のままの生き物だ」
「そう。だから…この子に非はないの。だから、百夜は苦しむことになるの」
百夜だって宿った我が子が可愛くない筈がない。
とは言え、花鳥の命を食らってしまう命でもある。