Love Eater Ⅲ


番として花鳥の命を諦める事も出来ず。

父として六花の命を諦める事も出来ず。

イーターの性質から他の魔物の魔力を食らい補う事で花鳥や六花にその力を与える事も出来たのだが。

基本取られすぎれば生命にもかかわる魔力を喜んで差し出す者などいない。

それに、相手の了承なく無理矢理襲って食らう程百夜も粗暴な男ではない。

そんな堂々巡りの苦悩の間にも日に日に百夜の魔力の余裕幅も少なっていってしまったのだ。

「分かっていたのにね。無理を続けて持つ話じゃないって。どんなに先延ばしにしても私の終わりは明確。分け与えてもらえる魔力だけでは私の身体を維持するだけが精々。とてもこの子を産みだすような消耗には耐えられない。……でも…私は別にこの子を残せるならそれで良かったんだけどな」

「それでよかった?消えたくねえとは思わなかったのか?」

「勿論、消えずに済むならそれが良いわ。でも、それが自分の寿命なら受け入れるしかないじゃない。それに私は花だもの。花は枯れるものでしょう?きちんと愛でられた時間もあって、次へと続く種子を残していけるのだから不満なんてある筈ないでしょう?」

「でも、百夜は違ったんだろ。どうしてもあんたを生かしたかった」

「……百夜なりの贖罪のつもりだったよきっと。悪戯に生み出してしまた命の責任とばかり。自分の余生を私に与えるつもりだったの。流石に百夜の生命力全てを譲渡されれば私だって生き永らえられたでしょうからね」

「…それであの呪いか」

「だって……愛する人の命を糧にしてまで咲き続けたいなんて我欲まではないわ、私」

だから、今という時間に繋がってしまうのだ。




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