Love Eater Ⅲ



愛し合ってはいるのに噛み合う事のないお互いの意志。

それでもどちらかを選ばねばならない時は先延ばしに出来ずに寧ろ刻一刻と迫ってきているのだ。

だとしたら、どちらがより早く自分の意志を行動に移すかという話となってしまう。

どんなに相手がその愛情ゆえに嘆くこととなってしまっても。

「私、嘘をついたの」

「嘘?」

「呪いをかけるためにね、百夜の意を汲み自分が生き残る道を選ぶわって。素直に百夜の生命力の譲渡を受けたのよ。…途中までね。この子を生み出す為にも、呪いの為にも、流石に自分だけの魔力や生命力では不足だったから」

「そうか。途中まで……百夜の限界ギリギリまで力を譲渡を受けたところでそれも糧に呪いをかけたのか」

「そうよ。余力も程々となった時点で彼の本来の姿を封じ記憶も隠蔽する呪いをかけた。その時点の百夜の余力じゃ私に抗える術はない。この呪いがとける時までもう百夜が私の事で苦悩することはないの。……なんなら一生とけずにいてほしかったくらいなのに」

「…呪い解除のリミッターはなんだったんだ」

「……時雨がこの子を見つけ『夜音』と呼ぶような瞬間が訪れてしまったら」

「………」

「その時は百夜の力が必要になる。記憶が後悔が強く時雨への抑止力として作用してくれる。その時まで百夜の力はこの子の中で息吹いていたの。流石に普通の出産までは私の身体では望めない。それに何も出来ぬ赤子の状態で産み落とす事わけにもいかない」

「つまり魔力を使って六花をそれなりに成長させた状態で生み出したってことか?」

「生きることに必要な知識はあの子の中の百夜のそれで補えるようにもしたわ」

「はっ……どおりでクソ生意気でドライな子供だったわけだ」

「それに、イーターのあの子は魔力でも空腹を補えるし、更に言えば夜音の自然の生命力を分け貰う能力も遺伝している筈。だから私が消えてしまっても生きながらえる事は出来たの」

そうして、話はソルトとの出会いに繋がっていくのだ。
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