Love Eater Ⅲ
生きる理由もなく意味もなく、ただ思考能力を持つ肉塊として訪れる死だけを待っていたその身。
それを無理矢理に、強引に人としてくれたのは。
名を与えてくれたのはソルトであるのだ。
六花の唯一で、絶対的な存在。
六花の生をソルトが望んだから六花は存在したのだ。
それは、精神的にも
肉体的にも。
ソルトは……僕の全て。
僕の絶対。
僕の……もの。
僕は……ソルトのモノ。
じゃあさ…………ソルトが居ない今、
「ぼくは…………いないね」
「………そうですよ」
「…………全部……………無いよ」
「っ…!?」
それは、時雨の待ち望んだ六花の崩壊。
それでも、時雨の予想外の六花の崩壊。
訪れた焦がれた瞬間の発声にはその口元の弧はより深く刻まれたというのに、次の瞬間の予想外の出来事には初めてその口角は下がりを見せる。
ただ精神を壊すだけのつもりであったのに。
六花という人格を壊すだけで。
ただそれだけのつもりであったのに。
六花が虚ろな表情で己の崩壊を口にした瞬間に、その身からサラサラと砂煙のようなモノが漂い舞い空気にほどけ始める。
もう自分は必要ないという最後の意識のままに、魔女の意識は自我だけでなくその身まで消滅すべきだと口にしてしまったのだ。
ソルトの為に存在した身にもう価値も意味もないと。